IPSのテクノロジーについて

 ここでは、TPC_IPS が採用する2種類の測位推定アルゴリズム ― TCOT と機械学習(kNN)、及び現在注目されている新しいテクノロジー・AoAについてご紹介します。

二円指向三点測位 ― TCOTの仕組み

 TPC_IPS は iBeacon を人やモノに取り付け、予め配置した複数の受信機(Raspberry Pi、RP)により iBeacon の信号を受信することにより、の座標を算出します。

 

 TPC_IPS の位置推定アルゴリズムの1つ、TCOT(二円指向三点測位)は、3つの受信機が受信した iBeacon の信号の強度(RSSI)から端末と iBeacon 間の距離を算出して、三点測位により iBeacon の位置を計算します。


 ところが受信機とiBeacon間の距離が離れるに従い、 RSSIとそれから算出される距離の精度は低くなります。
 補正処理を施しても、図のような「理想」的に3円が交差する状況は少なく、「現実」のような状況が多々発生します。3円が交差しない状況では、伝統的な三点測位は破綻します。
 

二円指向三点測位のイメージ図    
二円指向三点測位のイメージ図    

 そこで当社では伝統的な三点測位が破綻する図のような状況であっても、測位を可能とする二円指向三点測位(TCOT)による IPSを構築しました。

 

 TCOTの詳細、その測定のテスト結果に関しては、こちらのブログ記事を参照してください。

全ビーコン位置のプロット

 TPC_IPS の「全ビーコン位置プロット機能」は、スキャン対象となった全ビーコンの実際の座標と、TCOT(あるいは後述の knn)により算出された推定座標を同時に表示します。

 これにより開発および導入時に、どの程度測位に誤差が発生しているのかを一目で把握できます。
矢印の出元の ● はビーコンの実際の位置、矢印先の●は推定位置
矢印の出元の ● はビーコンの実際の位置、矢印先の●は推定位置

TCOTの測位精度について

 IPS を評価する際に測位精度は重要な要素となります。

 測位精度を「実際のビーコンの位置座標と測定されたビーコンの位置座標の差」とした場合、TPC IPS の測位精度は以下の通りです。

ロケーターを4m×4m間隔(4mGird)で配置した場合:約2.6m

ロケーターを8m×8m間隔(8mGird)で配置した場合:約3.8m
ロケーターを16m×16m間隔(16mGird)で配置した場合:約7.0m

注:

・ロケータ(Raspberry Pi 受信機)が正方形を成すように配置し、且つ正方形の中心にもう1つロケータを置いた場合。

 

 

※ 測位精度のテスト結果は下記で公開しています。

iBeacon/Raspberry Pi による室内移動体位置監視モデル 3 ~ 二円指向三点測位の拡張(TCOT)と測定結果 ~

フィンガプリントと機械学習

機械学習による推定位置精度の向上

 TPC_IPSの位置測位のもう一つのアルゴリズムにフィンガプリント /機械学習(knn) があります。このアルゴリズムでは受信端末が既知の位置にあるビーコンから受信する RSSI を事前に登録しておきます。例えば、座標(0, 4)に位置するビーコンを端末Xが受信した際のRSSIは -77 である、というようにデータベースに登録します。同様に、全監視エリアにビーコンを配置し、実際の位置座標と RSSI を登録します。これをフィンガプリントと呼びます。

 

 このフィンガプリントのデータに対して、機械学習のアルゴリズムの一つである kNN(k近傍法)を適用して位置座標を算出します。 下図は TCOT と knn、それぞれの位置座標の推定値をプロットした結果です。

TCOT(上述)による測位

機械学習(knn)による測位

  

 図のように knn を使用すると、左図のTCOT より測位精度は大幅に改善される可能性があります。 ただフィンガプリント/機械学習は、事前にビーコンを配置して測定、また配置して測定という作業を繰り返し、コンピュータに学習させる(教師あり学習)必要があるため、準備に時間と労力を要します。 

 機械学習については、下記のリンク(Blog)もご参照ください。

機械学習によりIPSの位置測位精度を改善する 

 

 機械学習には kNN だけではなく、さまざまなアルゴリズムが存在します。 今後、当社では他のアルゴリズムについても検証・実装を行い、本サイト等で結果を公開していく予定です。

AoA/AoDによる測位精度の向上について

Bluetooth Direction Finding ― A Technical Overview by Bluetooth SIG
Bluetooth Direction Finding ― A Technical Overview by Bluetooth SIG

 AoA(Angle of Arrival)/AoD(Angle of Departure) は、ビーコンなどの送信機がある"方向"を検知する機能です。

 Bluetooth 5.1 は AoA/AoD に対応し、これにより1m以下の精度で位置測位が可能になると期待されています。

 図は AoA の方向検知の方法を示しています。 ロケータ(受信機)に設置/接続された2つ以上のアンテナがビーコン信号を受信し、アンテナ間の距離と位相差、波長により、ロケータからみたビーコンの方向(角度)を算出します。正確な角度がわかれば、距離のみに依存した単純な三点測位に比べて、高い精度でビーコンの位置座標が算出できます。

 2020年5月現在、Bluetooth 5.1 対応の SoC を搭載したロケータや送信機(ビーコン)は"主要"ベンダーからはリリースされていませんが、当社では AoA/AoD による方向探知と TCOT を統合することにより、測位精度を上げるべく研究・開発を進めています。

 

注:
フィンランドの Quuppa社は Bluetooth 5.1 の仕様策定(2019年初頭)の何年も前から AoA を採用したIPS(RTLS)独自技術で製品化しており、高精度測位に定評があります。 高速で移動するアイスホッケーの選手の動きをQuuppa の RTLSによりトラックする動画も公開されています。